テイラー・スウィフトさんのコンサートの「事故」が示した水分補給予測の重要性
「熱波の頻発などの気候変動下では、健康やパフォーマンスの維持、水分のロジスティクス確保のために、水分補給の必要量や内容の科学的予測が必要」これは私のサイトでも取り上げているし、私のNoteでも取り上げているものだ。これが当てはまるペルソナは、アスリートやエッセンシャルワーカーに限られない。
この事実を痛く悲しい形で思い知らされる出来事が起きた。例年にない猛暑下のブラジル・リオデジャネイロのNilton Santos Olympic stadiumで11月17日に開催されたテイラー・スウィフトさんのコンサートで1,000人以上が熱中症で倒れ、1人が亡くなったのだ。
これを伝える日本語の記事は以下のものがある。
この日、リオデジャネイロの暑さ指数(温度と湿度を合わせた暑さの指標)は59.3℃を記録。これは観測史上最高とのことだ。この条件で開催されたコンサートは、水分や飲料水の外部からの持ち込みが禁止された。さらに、コンサートとなると、気象台が発表する数字より体感での暑さを強く感じることが予想される。観客にとって、これは逃げ場のない最悪と言っていい条件だ。当然、この措置には来場した観客から強い非難が挙がっている。持ち込み禁止の理由は一次情報が私にはないので正確には分からないが、テロ防止や水筒の投げ込み防止などの安全上の理由が考えられる。会場での水の販売の確保する狙いもあったのかもしれない。
開場前の列に並ぶファンは、写真のような状況で待っていたらしい。見るだけで暑そうだ。写真の出典は末尾の参考の記事である。
私は、「水分補給の必要量や内容」や「水分補給自体の重要性」が分からないことが根本の原因だったと考える。警備面からの安全対策と両立させるなら、必要な水分需要を把握したうえで対応する無料の給水設備を設置する手もあったはずだ。あるいは、入場口で水筒をチェックする手もあったと思う。どちらも確かにコストが要るが、安全上必要なコストだ。このコスト把握の基礎となり前提となるのが、やはり天候と運動に連動した必要量の予測と思う。
水分の需要は、量だけの問題ではない。スポーツドリンクの併用などの質の問題も出てくる。猛暑下の真水のがぶ飲みは脱水を誘発する危険もあり、スポーツドリンクなどミネラルを含んだ飲料の併用も必要だ。その一方でこれらの飲料は高額なうえ、砂糖の過剰摂取の危険から逆に「取り過ぎ」の問題もある。もう1つは会場のコンディションの問題だ。この会場の詳細は分からないが、日本のスポーツ競技の会場には、人工芝の維持管理を理由に、スポーツドリンクの持ち込み自体を禁じているものも多い。
どれくらい必要なのか?詳細な情報が分からないが、推定可能な範囲で私なりに予測してみた。コンサートの開始時刻は18:00で、現地時間の当日この時間のWBGTは、OPEN-METEOのデータから推定するとだいたい28.5℃。ただし、密集環境なので31℃くらいになるかもしれない。この前提で、体重50㎏の人が3時間観衆として参加すると1.8~2ℓ脱水する可能性が考えられる。真水だけでは対応が難しい量だ。
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なお、現地時間の翌日11月18日のコンサートは延期。その後次週にわたってリオデジャネイロ、サンパウロ開催されるコンサートでは、飲料水の持ち込みが認められたとのことだ。
<参考>
Taylor Swift fan dies before 'The Eras Tour' concert in Rio de Janeiro, Brazil
Ana Clara Benevides Machado was helped by paramedics before dying in a hospital.
ByNadine El-Bawab
November 19, 2023, 5:51 AM