極端化した世界の異常な海水の高温

 例年の傾向とは反して4月中旬まで上昇を続け、3月中旬以降過最高の水準で推移するようになった世界の平均海水温。その後どうなったか。
 過去最高の水準であることは変わりない。それどころか、昨年までの各年の実績値との差が一段と開き、今や「どの年に比べても圧倒的に高い」水準で推移しているのだ。
 Climate Reanalyzerサイトより各年の世界の平均海水温(南緯60度~北緯60度)のグラフの推移をみると、以下のようになる。

 詳細は以下の通り。
https://climatereanalyzer.org/clim/sst_daily/

 6月15日時点の各年の変化は以下のとおり。
  1985年:19.9℃ 1995年:20.2℃ 2005年:20.3℃ 
  2015年:20.6℃ 2022年:20.6℃ 2023年:20.9℃

 年々上昇傾向にあるが、2022年~2023年の1年間だけで0.3℃も上昇している。

 北大西洋に関しては以下のようになる。

 6月15日時点の各年の変化は以下のとおり。
  1985年:21.5℃ 1995年:22.1℃ 2005年:22.1℃ 
  2015年:21.9℃ 2022年:22.3℃ 2023年:22.8℃

 1995年~2022年に関しては上昇傾向が一貫しておらず、年によっては前年から低下する年もあった。そうした中、2022年から2023年にかけて、北大西洋では世界全体を上回る0.5℃の上昇を示している。グラフの目盛の設定上上昇幅は大きく見えないが、実は、世界全体と比べて極端かつ深刻な傾向を示しているかもしれない。

 以下が、2023年6月15日時点での、1971年~2000年の同日の平均と比較した、世界全体での海水温の高低を地図で示したものである。

 エルニーニョ現象の始まりを背景としてペルー沖が高くなっているほか、日本海、北太平洋、ニュージーランド南東、南米大陸よりの南大西洋、そして地中海西部や北大西洋で上記平均より高い温度を示している。

 地上の気温にはどのように反映されているか。2023年6月17日時点での世界の気温(地表2m)につき、1971年~2000年の同日の平均と比較した高低を地図で示したものが以下である。

 
 これによると、気温が上記30年間の同日の平均より大幅に高いエリアは以下のようになっている。

 ・ヨーロッパ(特にスカンジナビア半島西部)
 ・南極大陸の一部
 ・西アジア
 ・中国北東部
 ・日本
 ・インド南東部
 ・アフリカ
 ・カナダ東部
 ・メキシコ
 ・オーストラリア
 ・ペルー南部~チリ北部
 ・シベリアの北極海沿岸

 海水温の状況と符合している。ヨーロッパでこれから熱波が起きないか危惧されるレベルだ。実際、ノルウェーのオスロでは、2023年6月16日に最高気温が30℃を記録している。
 Climate Reanalyzerサイトによれば、2023年6月16日時点の平均気温を1979~2000年の同日の平均と比べると、以下のようになる。

 世界:+0.61℃ 北半球:+0.64℃ 北極:+0.27℃
 熱帯:+0.61℃ 南半球:+0.57℃ 南極:+0.27℃

 海水温の2023年の変化傾向に関して私が気になる点を簡単にまとめると以下のようになる。

   「ティッピング・ポイント」の入り口では?

 これは、物事がある一定の閾値を超えると一気に全体に広まっていく際の閾値やその時期、時点のことで、一般的には「転換点」と訳される。気候変動問題については、この転換点を過ぎると、気候変動が一気に進む恐れがあることが指摘されている。6月に入っても、日本での早い台風による大雨、NYなどアメリカ東海岸に大気汚染をもたらした山火事の発生に寄与したカナダの猛暑、シベリアの猛暑…などいくつもある。

 取り返しのつかない事態になる前にどうするか、考えないといけない警鐘ともいえよう。

【関連】
「2023年春の異常に暖かい世界の海-驚きのグラフが語るもの」(私のNote記事です)
https://note.com/clutchman/n/n93429012149c

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