NYYアーロン・ジャッジの「穴」:1人の中心選手に依存する危険

 2023年、MLBではヤンキースの苦戦が続いている。よく言われるのが2022年のMVPでチームの主砲であるアーロン・ジャッジの故障である。今シーズン、ジャッジは4月下旬のツインズ戦でのスライディングでヒップを痛め9試合欠場、さらに、6月3日のドジャース戦で捕球の際フェンスにぶつかり右親指の靱帯を痛めた。後者による欠場は現在も続いている。では、「ジャッジの穴」を数字化するとどうなるのか?以下の数値に関して、ジャッジがいるとき、ジャッジがいないときの2期間の数値や分布を比較した。

1.勝率
2.得点数
3.塁打数

 なお、期間は、現地時間6月22日終了時点とする。

アーロン・ジャッジとは

 釈迦に説法と言われるかもしれないが、知らない人のために簡単に書いておこう。簡単にいうと現在のヤンキースの最強打者で主砲である。2023年からはキャプテンに就任した。2022年は、以下の成績を上げ、アメリカン・リーグのホームラン王、打点王、そしてMVPになった。

打率:.311 出塁率:.425 長打率:.686 OPS:1.111 HR:62本(AL新記録) 打点:131

 2023年も出場49試合で以下の好成績を残している。ただし、上記の通り、2度故障による長期欠場を余儀なくされた。故障に起因する欠場試合数はすでに24にのぼっている。(数字は6月22日終了時点)
打率:.291 出塁率:.404 長打率:.674 OPS:1.078 HR:19本 打点:40
 2022年オフには、ヤンキースと9年360Mドルの長期契約を結んだ。2023年はその1年目である。

1.勝率でみた「穴」

 6月22日終了時点で、ジャッジがいた試合(WITH)、ジャッジが故障欠場した試合(WITHOUT)での勝敗を比較すると以下のようになる。なお、故障ではなく休養のために欠場した試合はWITHとして扱った。

WITH:32勝19敗 勝率.627
WITHOUT:9勝15敗 勝率.375

 WITHとWITHOUTで2割5分の差がある。WITHの場合の勝率.627は、6月22日終了時点で、ALのワイルドカードの1番目に入る数字だ。

2.得点でみた「穴」

 6月22日終了時点におけるジャッジがいた試合(WITH)、ジャッジが故障欠場した試合(WITHOUT)での得点分布をグラフにしてみた。縦軸は試合数、横軸は1試合当たりの得点である。

 グラフの山は一目瞭然。WITHの場合は6点、WITHOUTの場合は2点にグラフの山が来ている。WITHOUTの試合数はWITHの試合数の半分以下なのに、2点の試合数はWITHOUTの方が多くなっているのだ。
 両者の平均、分散、標準偏差は以下のとおり。
  WITH:平均5.00 分散10.20 標準偏差3.19
  WITHOUT:平均3.17 分散2.84 標準偏差1.69

 WITHとWITHOUTの場合では平均得点に1.83点の差があるほか、WITHOUTの場合、約70%近い確率で、得点が1.6点~4.9点にとどまることとなる。一方、WITHの場合も得点のばらつきが大きい。WITHOUTの場合、計算上、約70%近い確率で得点が1.9点~8.2点になる。

3.塁打数でみた「穴」
 6月22日終了時点におけるジャッジがいた試合(WITH)、ジャッジが故障欠場した試合(WITHOUT)での1試合あたり平均塁打数の比較は以下の通り。その差は3.15と、三塁打1本分になる。

WITH:平均11.42 WITHOUT:平均14.57

まとめ
「ジャッジの穴」を数値化すると以下のようになる。
・勝率:約2割5分
・得点数:1.83点/試合
・塁打数:3.15/試合

 1人の中心選手の故障欠場がチームにおける影響は、やはり相当のものがある。中心選手がたった1人抜けることが他の選手にもどのような影響を及ぼすのか??このジャッジのケースはいい一例だ。逆に言えば、個人1人だけに依存するチームづくりの危険の大きさもわかる。個人的には、得点数、塁打数の差以上に勝率の差が大きく現れたような気がしてならない。メンタル面や粘り強さにも影響しているのだろうか?
 ヤンキースの他の選手を詳細に分析してみると面白いかもしれない。

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