7月上旬の豪雨-どこか似ている今年GW最後の大雨
2023年7月10日の夜~午前中を中心とした、梅雨前線による九州北部地方の豪雨被害は未だに記憶に新しい。この豪雨は山陰地方や北陸地方にも広がり、私の出身地である富山県では、現地目線ではまさかの洪水被害も出たほどだ。
ここで私が思い出したのは、以下の2点だ。
・ゴールデンウィーク最後、5月6日~7日の大雨
・東シナ海~日本海の海水温
私が未だに覚えているのは、ゴールデンウィーク最後の天気図。5月6日12時時点のものは、以下のようになる。
2023年5月6日12時現在の天気図
この天気図は、まさに梅雨末期そっくり。いや、梅雨末期の天気図だ。5月上旬にこんな形の天気図ができること自体驚きだった。そして、もっと海水温が高ければもっととんでもない雨が降ったのでは…海水温が上がる7月~9月に同じような気圧配置になればとんでもないことが起こるのでは…と不安に感じていた。
ちなみに、5月6日時点の海水温の分布図は以下のとおり。幸いなことに、まだ上がり切っていない。
2023年5月6日現在の海水温分布
それでも、平年に比べると高い状態であるのは確かだ。
2023年5月6日現在の海水温の平年差
続いて、九州北部に豪雨が発生した7月9日の天気図、海水温及びその平年値との比較を示す。
2023年7月9日6時現在の天気図
2023年7月9日現在の海水温分布
2023年7月9日現在の海水温の平年差
天気図は5月6日時点とそっくり。しかし、海水温は当時に比べて明らかに高い。5月6日と同様に、東シナ海~日本海の海水温は平年より高くなっている。
福岡に関して、前線に起因するとみられる降水量の差は以下のとおり。7月時点の方が大雨の期間が長くなり、そしてピークの降水量はより多くなっている。2日間と4日間の違いはあるが、豪雨期間の降水量に関して言えば、7月上旬は5月上旬の2.6倍ある。
【降水量】
5月6日: 52.5㎜
5月7日: 79.0㎜
計 :131.5㎜
7月 7日: 54.5㎜
7月 8日: 41.5㎜
7月 9日: 44.5㎜
7月10日:198.0㎜
計 :338.5㎜
【平均気温】
5月6日 19.6℃
5月7日 15.5℃
7月7日:28.3℃
7月8日:27.7℃
7月9日:27.4℃
7月10日:26.6℃
この降水量の差は、おそらく、気温や海水温の差に起因するだろう。気温が1℃上昇すれば大気中に含むことのできる水蒸気量は7%増えると言われ、海水温が高ければ蒸発する水蒸気の量は増加する。この点、5月に比べて7月に水蒸気量が多くなるのは明らかだ。
もう1つ考えないといけないのは、梅雨時のような気圧配置が、春にも秋にも、さらには「梅雨明け後」にも、季節を問わず起こるようになった点だ。この分停滞する前線による雨が降る確率が上昇し、ちょっとした気温や海水温の上昇で豪雨に見舞われるリスクが高くなる。こうした気圧配置の変化は、地球温暖化により偏西風が遅く蛇行しやすくなったことに起因しているとみられる。
今後は、さらに気温や海水温が上がれば、7月上旬のような豪雨は5月にも11月にも起こる可能性が考えられる。「ゴールデンウィークでの梅雨前線による豪雨」さえも想定できる。加えて、今年の日本海の海水温は、過去の平均値よりずっと高い。北日本であろうと7月~8月に梅雨前線が停滞する事態が起これば、豪雨が発生する危惧がある。
天気図と海水温、さらにこれと連携する大雨の状況をみても、気候危機に立ち向かう必要性を改めて感じさせる。