気候変動で水がないフランス領のマヨット島-ペットボトルでの緊急対応とその課題
世界には、現在、気候変動で極端に降水量が減って干ばつになり、極端な水不足に苦しんでいる島がある。もはや生活に直接影響する「気候危機」のレベルと言っていい。さらに難しい点は、この問題への対処が、また新たな環境への影響を招きかねないことだ。
この島は、マダガスカル付近のインド洋に位置し、本島のほか複数の島や珊瑚礁で構成されているマヨット(Mayotte)島だ。現在フランスの海外県となっている。位置関係を私なりに簡単に言うと、赤道よりちょっと下の南半球、アフリカ大陸からみてちょっと東側にある。人口に占める国家貧困ライン以下の生活水準の居住者割合が、他のフランスの領土の5倍以上の77%と、ヨーロッパの領土の中では最も貧しい地域である。
ここ数年間干ばつが続いているこのマヨット島では、2023年は、1997年以降最悪の干ばつに見舞われている。科学者たちは、2023年の干ばつを気候変動による影響と認めている。同島での水源の貯水率はもはや10%を割った。水道は3日に1度、18時間しか使用できない。水道の水質もかつてから悪く、数時間流さないときれいな水が出ない。人口は2007年以降倍増しているのに新たな水源の整備が進んでいないことも要因だ。その結果衛生状態が悪化、コレラや腸チフスなどの伝染病も蔓延している。この状況下で、公平な水へのアクセスを求め、'Mayotte is Thirsty'(マヨットは喉が渇いている)と呼ばれるデモも怒っている。マヨットの1日あたりの水需要43,000立方メートルに対し、現在の供給は26,000立方メートルで、水源が完全に底をつけば20,000立方メートルになる。
▲水源の枯渇(出典:末尾の参考2)
▲水をくむ人(出典:末尾の参考2)
この当面の解決策として取られたのが、本土から大量のペットボトル入りの水を運ぶことだった。9月中旬から始まったこのペットボトル輸送は、最初は約6万人の脆弱な層(高齢者、障がい者、妊婦、新生児)だけを対象としていたが、11月20日になり、約31万人の全住民が対象となった。現在、1日33万ℓのペットボトル水が兵士・消防士によりマヨット島へ輸送されている。
▲ペットボトルの配送(出典:末尾の参考2)
▲ペットボトルを受け取る住民(出典:末尾の参考1)
ここでの問題がペットボトル廃棄物処理だ。毎月1,700万リットルのペットボトル水がフランス本土や周辺のフランス領から運ばれる見通しになった影響により、マヨット島のプラスチック廃棄物は1日当たり1,100万トンと見込まれている。前年にマヨット島でリサイクルされたプラスチック廃棄物は年間45万トンを圧倒的に上回る量となっている。プラスチック廃棄物の処理能力がないところに大規模な汚染がおこる可能性を環境活動家は懸念している。
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当面の策としてはペットボトルへの依存はやむを得ないところもあるが、廃棄物の処理やマイクロプラスチックの発生、さらに輸送にかかるコストやカーボンフットプリントを考えれば、どうしても環境への負荷は避けられない。結果、気候危機への対処・適応が、新たな環境破壊や気候危機の悪化を引き起こすというマッチポンプを引き起こす恐れもある。SDGs6にもうたっているように、一番必要なのはあらゆる層が公平に水にアクセスできること。根本的に必要なのは、このマヨットで進まなかった水道インフラ整備、そして気候変動への対策だろう。ただペットボトルを運ぶだけが、恒久的で持続可能なソリューションとはいえまい。
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