8割超が深刻な懸念…世界のアスリートの気候危機への意識

 スポーツと気候危機…本来密接に結びついているはずのこの2テーマは、少なくとも私には、多くの人にとって「全くの別の問題」として認識されている感がある。「夏の甲子園」に対して開催時期を変えろ、開催時間を変えろ、開催自体おかしいという声はネット上などでよく目や耳にするが、「夏の甲子園をいつまでも行える地球環境を守ろう」という意見は「少なくとも私以外には」ほとんど見られない。この件につき私が旧ツイッターで発信したところ、炎上してしまった経験すらある。

 しかし、世界的には、気候危機の深化につれ、当のアスリート自身がこの結びつきをより深刻に自分ごととしてとらえているようだ。その問題意識は実は私の想像より高いようだ。COP28の開幕とほぼ同時に発表された世界陸上競技連盟による調査では、2023年は、85%のアスリートが、気候変動が陸上競技に悪影響を及ぼしているとした。これは前年に比べ13%の増加である。気候危機や大気汚染のことをきわめて深刻に懸念しているとしたアスリートは82%で、前年比で11%の増加となった。以下が世界陸連によるイメージ画像のまとめである。いずれも、下記のプレスリリースからの引用である。


 このソースの1つが、世界陸上競技連盟による2023年11月29日の以下のプレスリリースである。その他、このトピックを取り上げた海外メディアの記事は複数ある。世界陸連によるこの種の調査は3回目である。2023年は、ハンガリー・ブタペストでの世界陸上の開催を機に開催され、373人の選手から回答を得た。

Three-quarters of athletes directly impacted by climate change, World Athletics survey finds


 以下が、プレスリリースを訳したものである。時間の関係上、自動翻訳の内容を私が修正を加える形で行った。

 環境・社会問題へのエリートアスリートの認識を把握するため世界陸上競技連盟が実施した第 3 回年次調査*によると、スポーツアスリートの4分の3 (75%) が気候変動による健康とパフォーマンスへの直接的な悪影響を認識し、85%が陸上競技に悪影響がもたらされたと回答した。
 明日(30日)ドバイで開催されるCOP28国連気候変動会議の開幕と期を同じくして発表されたこれらの調査結果は、2022年と比べ目立った増加を示した。2022年時点では、気候変動がスポーツに悪影響を及ぼしたと考えたのは72%、直接的な影響を報告したのは62%だった。
 8月のブダペスト23世界陸上競技選手権大会に出場した約400人の選手を対象とした調査でも、気候危機と大気汚染について77%が極めて懸念、83%が非常に懸念しているとした一方、より持続可能な未来の構築に向け陸上競技が果たすべき役割があるとしたのは90%だった。
 2023年が記録上最も暑い年になると見込まれる中、アスリートの高まる懸念は現況と符合している。国連は2.5℃から2.9℃の破滅的な気温上昇の可能性があると警告した。これは、今後数年間で、さらに頻発する極端な気象事象がアスリートの健康や陸上競技に影響を与える可能性が高まる可能性に警鐘を鳴らしている。
 世界陸連のセバスチャン・コー会長は、「アスリートたちは、気候危機が自分たちの生活やスポーツに与えている影響を明言し続けている。彼らの懸念は声高に明白である。こうした懸念に応える行動を続け、意味のある変化に向け我々の影響力を利用することが重要だ。」と述べた。

これらの懸念へ取り組むべく、世界陸連は 2022 年に「Champions for a Better World」を設立した。このグループは、6大陸地域のそれぞれを代表する 9 人のアスリートで構成される。構成員は、アスリートが共に持続可能性の意識を高められるよう、スポーツ内での持続可能性キャンペーンに支持を表明している。2年目を迎えたこのグループでは、オーストラリアの競歩選手リディアン・カウリーが新たなメンバーとなり、ケルシー・リー・バーバー(オーストラリア、やり投げ)、アジュラ・デル・ポンテ(スイス、短距離走)、アリソン・ドス・サントス(ブラジル、ハードル)、サム・マティス(アメリカ、円盤投げ)、エリザ・マッカートニー(ニュージーランド、棒高跳び)、アーネスト・ジョン・オビエナ(フィリピン、棒高跳び)、エレナ・バロルティガラ(イタリア、走り高跳び)、ヒューグス・ファブリス・ザンゴ(ブルキナファソ、三段跳び)といった著名なアスリートのラインナップに加わった。
 初年度、Champions for a Better Worldのアスリートたちは、ブダペスト23世界陸上競技選手権大会のグリーンゾーンでの交流イベントに参加、アースデイのビデオプロジェクトに加わって、ファンや仲間のアスリートたちとのワークショップや個人の取り組みを広げた。
 2年目が始まる記念として、また2度のオリンピック出場選手であるカウリーを迎えるために、このグループは、ともに協力して新しいビデオを制作した。これは自らの持続可能な日常習慣にいくつかスポットライトを当てたものだ。このねらいは、調査上では77%のアスリートが環境負荷軽減のためライフスタイルを変えるつもりとした表明したことの強調である。
 世界陸上競技連盟は、昨年1年間にわたった、組織戦略に沿いイベントの持続可能性を評価すべく開発された認証であるAthletics for a Better World(ABW)スタンダードの 2 回目の試験年度を終了した。この規格は2024年1月に導入される予定で、2021年12月の発表以来、約300のイベントの主催者が採り入れた。2023年世界選手権の開催地であるブダペストは、この規格を完全に採り入れて試験する最初の地域組織委員会となった。ABWスタンダードは、世界陸上競技大会が 4月にISO 20121サステナブルイベント認証を取得する上で重要な役割を果たし、その持続可能性への取り組みの有効性を検証した。

*2023年8月20日から9月15日まで実施された調査には、373人のアスリートが参加した。

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