急な気温変化…福岡での11月の平均気温推移の可視化とそこからの学び

 2023年11月は、以下のように記憶されている人も多いと思う。

・急に暑くなったり寒くなったりする
・何を着ればいいのか分からない

 私の住む福岡の気象データをみると、この感覚が数値化、可視化されていた。本稿では、福岡を例に、2023年の11月の気温の推移の特徴を、過去2年や平年値との比較を中心に取り上げてみる。

(1)過去3年の各日の気温の推移と平年との比較

 気象庁のデータをもとにグラフにすると、以下のようになる。


 やはり2023年の上下動が大きい。1日あたり0.1~0.3℃低下する平年のグラフに対して、2023年は、平年のグラフと比較した上下の変動が顕著である。まとめると、上旬は平年を大きく上回り、中旬は平年を大きく下回り、下旬は上下動が大きい、ということになるか。2021年はどちらかというと低温傾向、2022年は高温傾向だったのとは異なる。

 各年の11月の平均気温及びその平年値は以下の通り。2021年は平年を下回ったが、他の2年は平年を上回った。
 2021年:13.9℃ 2022年:16.2℃ 2023年:15.1℃ 平年:14.2℃

(2)過去3年の各日の気温に関する平年差の推移

 これも、気象庁のデータをもとにグラフにしてみた。


 このグラフだと、2023年の上下動の大きさがさらに顕著になる。2023年は、平年を6℃上回る日があるかと思えば、平年を4℃下回る日もある。
 このばらつきは、標準偏差の形にするとよりわかりやすい。各年における平均気温の平年差を標準偏差で表すと、以下のようになる。ここ3年は拡大傾向を示しており、2021~2023年では1.33℃拡大している。
2021年:1.56℃ 2022年:2.40℃ 2023年:2.89℃

 なお、平年を上回った日、平年と同じ日、平年と下回った日は以下のようになる。いずれの年も、平年を上回った日が一番多い。
(以下の数字は、上記の記述の順番による)
・2021年:15日-3日-12日
・2022年:24日-1日-5日
・2023年:18日-1日-11日

(3)過去3年の各日の気温に関する前日との差の推移

 「急に暑くなったり寒くなったりする」これを表す指標に考えられる、前日と比較した平均気温の変動を数値化してみた。グラフは以下のようになる。

 
 これに関しても、2022年11月下旬の後半を別にすれば、2023年の上下動が一番大きく見える。標準偏差の形にするとより具体的になる。各年における平均気温の前日との差を標準偏差で表すと、以下のように、ここ3年は拡大傾向を示している。
・2021年:1.41℃ 2022年:1.97℃ 2023年:2.45℃

まとめ
 
2023年までの3年間をみると、11月の平均気温はより推移が不安定になり、上下動が大きくなっている。一方で、いずれの年も、平均気温が平年値を上回った日が下回った日を上回っている。こうした推移は、全体で温暖化が続きながら、気温の変動が大きくなったために顕著に寒い日も現れるという、最近の気候変動に典型的な傾向を示している。
 地球温暖化の影響は、平均気温が上がることだけではない。平均値が上がる一方で推移が不安定になり、時には極端な寒さとなって影響を及ぼすこともあるのだ。これは、裏返せば、平均気温の推移以上に夏の猛暑もより顕著になることでもある。温暖化に伴う偏西風の蛇行の顕著化がその原因の1つとなっている。
 単に「暑かったり寒かったり」で終わらず、ここから考え、どのような将来を予測するかが、2023年11月の気温の推移からの重要な学びであろう。
 このタイミングで、COP28も始まった。

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