スポーツ-気候行動の重要な担い手か?

 ドバイで開催されたCOP28が終了してから1週間たっただろうか。私の考えでは、気候変動対策における大きな担い手となるのがスポーツ界である。実際、海外を含めた記事を検索すると、スポーツと気候変動対策の関わりがいくつか見られるようになってきた。
 今回はその1つ、以下の記事を取り上げよう。

Sport – a key player in climate action?
スポーツ-気候行動の重要な担い手か?

12 May 2023 Directorate-General for Climate Action

https://climate-pact.europa.eu/news-and-events/news/sport-key-player-climate-action-2023-05-12_en

 この記事は、2023年に立ち上がったヨーロッパのプラットフォーム「European Climate Pact」の中の一記事で、2023年5月に書かれたものだ。
 以下、その訳を載せておく。なお、Google翻訳を使用の上、私が日本語を修正したものであること、日本語を直す過程で意訳の度合いが強くなって原文の文法とはかけ離れた部分があることに留意されたい。

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 スポーツはヨーロッパ文化に欠かせず、人々と国全体を団結させる力を持っています。健康的なライフスタイルをサポートし、強力なコミュニティを構築し、社会の結びつきを強め、何百万人ものヨーロッパ国民を雇用しています。多くの人にとって、スポーツは生活と文化の重要な部分です。
 スポーツと気候の関係は複雑と言えます。スポーツからの排出は気候変動の大きな原因になっている一方、熱波をはじめとする異常気象現象は競技に悪影響を及ぼし、アスリートの健康とパフォーマンスに影響を与えます。
 スポーツをより気候に調和したものに変えることが重要と理解する人々の活動が広がっています。スポーツには、世界中に数十億人の観客、選手、アスリート、ファシリテーターがいて、非常に広範な社会的プラットフォームを有し、地理的な影響力を及ぼしています。意識の向上、行動への影響、気候変動対策への姿勢の変化に重要な役割を果たすのに加え、排出削減の影響が大きいソリューションの先駆者ともなれます。
 では、スポーツと気候変動はどのように関係しているのでしょうか?またこの将来に向けた意味は何でしょうか?

気候変動はすでにプレーに混乱をもたらしている

 世界中で、気候変動のスポーツへの影響がすでに目の当たりになっています。特に数百万人のファンを集める大規模イベントはそうです。
 たとえば、2020年の全豪オープンでは、山火事による大気の悪化により、一部のテニス選手がトーナメントからの棄権を余儀なくされました。同様に、米国テニス協会は、2018年の全米オープン後に、高温時にプレーヤーに定期的な休憩を許可する「極度の暑さに関するポリシー」を導入しました。
 猛暑が影響を及ぼすのは夏のスポーツだけではありません。最近の研究によると、かつての冬季オリンピック開催都市の半数は、雪と氷の不足により、2050年までに冬季オリンピックを開催できなくなる可能性があります。
 気象パターン予測が困難な温暖化が進行する世界が意味するのは、レースの延期や競技の中止です。これが、スポーツ組織に大きな混乱を招き、アスリートや観客に残念な結果をもたらしえます。
 地方レベルでは、雪不足によるスキーシーズンへの悪影響、大雨や競技場の冠水によるスポーツの授業や練習の中止といった形で影響が出る可能性があります。スポーツ施設やアクティビティを管理する組織だけでなく、何百万もの人々がすでに自らのスポーツへの何らかの気候影響に直面しています。その影響は時間の経過とともにさらに増大するでしょう。

フィールドでのスポーツの地位の認識

 大規模スポーツイベントは、大きな楽しみや祝福をもたらし得る一方で、膨大な二酸化炭素排出を伴う可能性があります。イベントへの往復の航空便、スタジアムの建設、スポーツ用品の製造、参加者からの廃棄物はすべて、環境に重大な影響を与えます。
 例を挙げると、推定上、2016 年のリオオリンピックでは 360 万トン、2018 年のロシアワールドカップでは 216 万トンの CO2 が排出されました。これは、1 年間に道路を走行する 465,000台以上の車の温室効果ガス排出量に相当します。
 さまざまな論争の原因となった 2022 FIFA ワールドカップ カタール大会は、史上初のカーボンニュートラルなサッカー トーナメントであると謳われていました。こうした世界的イベントが気候変動対策に焦点を当てていることは望ましいことですが、報告書からは、この言い分が誤解を招くものことと示されてきました。これは、気候変動に関する言い分が厳しい目にさらされているほんの一例です。これはスポーツウォッシングという新しい用語の誕生につながりました。グリーンウォッシングと密接に関係しているスポーツウォッシングは、スポーツを通じて国や組織の評判を高めるために使用される戦術です。
 2024年の次回オリンピック開催地として、パリの主催者は、全体を「気候に前向きな」大会とするなど、野心的な環境目標を発表しました。この主張に懐疑的な人もいますが、スポーツイベント開催に用いられる会場の95%が既存である事実からみて、二酸化炭素排出量が劇的に削減される見込みです。カタールから学ぶことは、パリが気候変動に対する野望に応え、業界の今後の模範を示すために重要となるでしょう。
 スポーツ団体、ファン、アスリートは皆、スポーツ団体に気候変動に関する主張の説明責任を負わせるとともに有、意義な気候変動対策に参画することで、スポーツウォッシュに屈しないための重要な役割を果たすことができます。

前向きな変化に取り組む

 気候を救うためのスポーツの可能性は、イベントからの二酸化炭素排出量の削減だけにとどまりません。何百万ものスポーツファンに気候変動への意識向上と行動を促すことでもあります。
 ヨーロッパで最も人気のあるスポーツでとして、サッカーは、幅広い観客にリーチし、大きな変化をもたらす可能性を秘めています。 2022年、UEFA(欧州サッカー連盟)は、省エネ意識の向上に向け欧州委員会と協力し、「サッカー持続可能性戦略2030:団結による強さ」の一環として、新たに持続可能なサッカーインフラのガイドラインを発表した。
 EUが共同融資した「LIFE TACKLE」プロジェクトも、サッカーの試合の環境管理を改善し、気候変動への意識を高めることを目的としています。これは、主要な利害関係者と関わり、ベストプラクティスを収集し、ヨーロッパ全土の各国サッカー協会を支援してサッカーイベントの開催方法を変えることによって実現します。
 より環境に優しい未来を模索するもう1つのスポーツは、既に電動化の進んだモータースポーツ業界です。非営利団体 EcoMood Portugal を設立した欧州気候協定大使のアントニオ ゴンサルベス ペレイラは、電動モビリティの専門家です。彼は、スポーツがより持続可能になりつつあることに希望を感じています。「たとえば、世界ラリー選手権ではすでにハイブリッド車(電気と合成低排出燃料を組み合わせたもの)が使用されています。これが物語るものは、そのソリューションが持続可能であり、ガソリン車よりもさらに優れたパフォーマンスを発揮できることを示していることです。それは大きな前進です。」

気候行動の擁護者

 スロベニアの気候協定大使で元オリンピックカヤッカーのウルシャ・クラゲリ氏は、他のアスリートも気候変動対策に参加するよう勧めています。「まず、自分にとって大切な問題を訴えてください。所属機関や組織と話し、イベントでの無駄を減らすなどの変化を起こすよう努めてください。」
 アスリートやスポーツスターは、プラットフォームを利用して気候変動とその影響を幅広く伝え、模範を示し、気候活動に直接参加することができます。
 ノルウェーのプロサッカー選手で気候協定大使のモーテン・トスビー氏は、自身のプラットフォーム「We Play Green」を通じて仲間の選手たちに気候について声を上げるよう勧めています。また、ブリュッセルでの最近の気候協定のイベントの場で業界全体が行動する必要性について語るなど、自身のメッセージをより多くの人に伝えています。
 そして、2021年11月にグラスゴーで開催された国連気候変動会議(COP26)では、2020年東京オリンピックに参加した50人以上の世界のオリンピアンとパラリンピアンが集まり、より野心的な気候変動対策を提唱しました。

あらゆるレベルでの団結力

 草の根レベルでは、スポーツはコミュニティと関わるための完璧なツールであることが多く、スポーツファンの関心を捉えて持続可能性につき考えてもらう待望のきっかけを提供します。
 ウルシャは、スロベニアオリンピック委員会内での立場を利用して、コミュニティの持続可能な変化を提唱しています。スポーツと持続可能性の結びつきを学びながら人々をスポーツの試合に参加させたいという熱意を持っていたウルシャは、5月9日のヨーロッパデーの祝賀会に向けて、気候の観点を取り入れたバスケットボール活動を企画しました。「ボールがネットに投げ込まれたとき、選手が気候に対する制約をし、そこにコミットするという考えを思いつきました。私たちは、123,256.50 kg のCO2 排出を減らしえる193 件の誓約書を作成しました。うち1つは、食品廃棄物の削減を約束したスロベニアのナタシャ・ピルク・ムサール大統領によるものです。」
 地域のイベントは、コミュニティの行動に大きな影響を及ぼしえます。ポルトガルでは、アントニオは、カラフルなキディカルマスサイクリングキャンペーンや毎年9月のヨーロッパモビリティウィークのカーフリーデーなど、年間を通じて数多くの環境に調和したイベントを企画しています。 「実践的かつ楽しい方法で持続可能性の意識を高めることが重要です。スポーツはこれの実行に向けた優れた方法であり、非常に効果的です」と彼は言います。

前向きな行動を

 スポーツは、気候変動対策に最も影響力のある推進力の1つとなる力を秘めています。大規模な世界的イベントから地域コミュニティのスポーツチームまで、誰もが気候の変化の影響を受けるでしょう。スポーツが社会にもたらす喜び、帰属意識、感情的なつながりは、私たち全員が守りたいと感じるはずのものなのです。
 あなたがテニスのプロであっても、熱心なランナーであっても、あるいは地元の集まりを楽しんでフットボールを観戦している人であっても、気候変動との戦いに参加することができます。環境に優しい移動をし、次のスポーツイベントには自転車や徒歩で移動すると誓ってみませんか?もしくは、Climate PactのWeb サイトにアクセスして、一人でも、あるいはスポーツチームと共同でも、気候に優しいやり方の手がかりを手に入れてみましょう。

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