「史上最も暑かった2023年」その詳細と背景

「2023年は観測史上最も暑い年になった」この内容は、既に日本語でも報じられている。以下がその一例だ。

2023年は「史上最も暑い年」 産業革命前から1.48度上昇
2024年1月10日 14:14 発信地:パリ/フランス [ フランス ヨーロッパ ]

 この記事などにより報じられている内容でキーとなる数字は「1.48℃」。2023年の平均気温は、産業革命前(1850~1900年平均、以下同)に比べて1.48℃上昇し、COP26で定めた「産業革命前と比較して1.5℃の上昇に抑制」という目標値に肉薄する結果となった。2023年に関するその他の特筆すべき事実として、以下のことが挙げられている。
・観測史上初めて365日すべてで1℃を上回った
・1年の半分以上の日で1.5℃を上回った
・11月には2℃を上回る日が2日あった
・過去10万年で最も平均気温が高かった可能性がある

 今回は、2023年の平均気温の動向の詳細や背景につき、上記記事が取り扱っていない部分も含め深掘りしてみる。

 産業革命前と比較した平均気温の上昇幅の推移は以下の通り。2023年は、これまで最高だった2016年を0.17℃上回った。


▲2023年の各日における産業革命前と比較した平均気温の上昇幅の推移(出典:下記ガーディアン記事)

 産業革命前と比較した各年の気温の上昇幅の内訳の推移は以下の通り。2023年になって濃い色の部分が多くなったように見える。2023年は、ほぼ半分の日で、産業革命前と比較した気温上昇幅が1.5℃を超えた。

▲産業革命前と比較した各年の気温の上昇幅の内訳の推移
(出典:THE 2023 ANNUAL CLIMATE SUMMARY Global Climate Highlights 2023)

 2023年に平均気温が最高値を記録した理由として、下記ガーディアン記事では、CO2排出量の増加のほか、エルニーニョ現象の発生が挙げられている。

 2023年のCO2排出量の見込みは2022年から+1.1%の368億トン、土地利用変化を合わせた排出量の見込みは409億トンとなっている。2023年は、大気中のCO2濃度は2022年から+2.2ppmの419ppm(※)、メタン濃度は同+11ppbの1902ppb(※)と見込まれている。2023年のCO2濃度は少なくとも過去200万年、メタン濃度は少なくとも過去80万年で最高値と推定されている。
(※:1ppm=0.0001%(100万分の1) 1ppb=0.0000001%(10億分の1))

▲大気中のCO2濃度の推移(出典:THE 2023 ANNUAL CLIMATE SUMMARY Global Climate Highlights 2023)

▲大気中のメタン濃度の推移(出典:THE 2023 ANNUAL CLIMATE SUMMARY Global Climate Highlights 2023)

 地域別にみた、2023年のCO2排出量増減は以下のようになる。地域間の増減傾向に大きな差がみられるようになった。
 インド:+8.2%  中国:+4.0%
 EU:▲7.4%   アメリカ:▲3.0%  その他地域:▲0.4%

 2024年はどうなるのか。CO2、メタンなどの温室効果ガスに加え、エルニーニョ現象の影響もあるはずだ。「2023年は21世紀の中でとても涼しい方の年だった」とならなければいいが…そんな願望的な言葉ではなく、そう「しない」ために動くことが重要だ。

【参考】
ガーディアン記事
2023 smashes record for world’s hottest year by huge margin

European Commission, Copernicus, ECMWF “THE 2023 ANNUAL CLIMATE SUMMARY Global Climate Highlights 2023”



Global Carbon Budget “Fossil CO2 emissions at record high in 2023”, Published on 4 December 2023

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